cheat_IEの雑録

趣味関連のことを書きます。

【雑記】言葉の効用・使い方

 

先日、古書店中村光夫=三島由紀夫『対談・人間と文学』(講談社,1968)という本を購入し、斜め読みしました。

その時点で一つ、明確に感じたことがあったのでここで記します。

 

まず、この本は評論家である中村と作家である三島の間で交わされる議論をまとめたものです。

そのテーマは題されている人間や文学はもちろんのこと、それ以外にも死生観や小説の書き方など様々な分野のテーマについて語られています。

両者の見識の深さを伺うことができる非常に厚みのある内容で、当然のことながら斜め読みしたくらいでは十分に記述することはできません。

ただ、それでも少し読んだだけでも伝わってきたことの一つが、両者の言葉の力強さです。

特に三島に関しては、没年の三年前ということもあり独自の死生観が色濃く反映されています。

それは人によっては毒となり傷になってもおかしくないようなまでの言葉の強さ、影響力です。

私の出身する学部柄もありますが、どちらかといえば私は三島から批判される側の人間で彼の言ってることに異論を抱く部分もあります。

そのおかげもあってか幸か不幸か彼の言葉に過度に振り回されることはありませんでした。

ただし、そんな自分でも感じ取ることができるくらいの言葉に重みがそこにはあります。

これが作家なりの独特な価値観や思想を確立したもので、そういったものに裏付けられた生の言葉の恐ろしさと美しさをそこで実感しました。

基本的に私は作家の作品にはよく触れるものの、こういった作家の生の言葉が語られるような対談形式のものは読んでこなかったために、今回衝撃を受けました。

一種、作品というフィルターを通して作家の思想に触れているために適度な距離をとることができているのであって、本当に作家の生の思想、言葉に触れてしまったら普通の人では耐えられないのではないかと。

三島について興味が沸いたため、Youtubeの「三島と東大全共闘」の討論会の動画も見て見てみると、そこでの議論は抽象的かつ話題が多岐に渡るため、非常に難解でしたが迫力のあるものでした。

言葉とは使い手の技量が、ここまで直接的に反映されるとは思ってもいませんでした。

当然のことながら言葉というものは単語一つで成り立つものではなく、文章という複数の語から構成されているものです。

そして、その文章というものにはその人の人となりや突き詰めれば思想といったものが現れてきます。

言葉を武器に勝負する作家はその手のプロですから、そういった人が用いた場合絶大な力を発揮するという訳です。

それが生の言葉であれば、尚更なわけでそれを今回思い知らされました。

言葉を巧みに操ることができる人物が用いた言葉は、ただ辞書に載っているような言葉ではなく、もはや「○○の言葉」(今回であれば「三島の言葉」など)として作用し始めることが分かりました。

そういったものがあるからこそ、作家であればこの言葉遣いは○○だ、○○の作風だなどといった風に第三者が見て判別できるようになるのかもしれません。

 

上で述べた話などとは雲泥の差があるわけですけれども、私もこうやって拙くではありますが文を書いています。

どうなんでしょうか、自分ならではの言葉の使い方や所作みたいなものは確立されているのでしょうか。

恐らく、それは自分で分かるようなものではなく第三者が気づいてくれる、拾い上げて

くれることで一つの形として帯び始めるものだとは思います。(この文、自分らしいと自覚しながら文を書く人がいるとするならばその人はすごい)

一つ言えるのは、自分で文をひたすら書くのにも限界があるわけで、良い文を書くには良い文に触れることが一番早いと丸谷の『文章読本』で語られていたことを皮切りに、色々な作家の本に触れていたことがありました。(それは今も続けている。)

先ほども述べたように作家の語る言葉は非常に強力で、少し前までは直前に読んだ作家の言葉遣いに強い影響力を受けて真似たような文を書くことも度々ありました。

そういったことを重ねているうちに気づけば最近は本を読んだとしても根本的に書き方が変わるといったようなことは少なくなってきたのです。

話を戻すと、自分の書き方は確立されたのだろうか、そういった話でしたが前よりは何かしら土台のようなものが作られているのではないかと考えている次第です。

それができれば読者の皆様にとって読みやすい文、良い文だと感じ取って頂けるものであれば良いのですが・・・、これに関しては日々の鍛錬ですね。

そして、あわよくば自分の言葉で人の心を動かせるような力を持ってみたいとも思いました。(力というものはえてして決して良いことばかりではないので使い方は気を付けなければなりませんが)

 

久しぶりにブログの記事を書いてみました。

見出しや脚注などを度外視して、雑記として書く程度であればわりと気軽に書けるものですね。(いつもは作品の感想や旅行記など襟を正してきちんと書くことが多いですが、それだと一つ一つが重たいのでどうしても腰が重くなってしまう。)

雑記も悪くないかもしれません。

 

それでは今回はここまで、読んで下さった方ありがとうございました。